【個人の同族間売買】親の物件を子供が買って住ませてあげる編(個人が法人へ建物譲渡するケースも言及)

まず大きな論点として、①同族間売買の注意点②適正な賃貸借条件でリースバックです。

 

 固定資産税評価額の「比率」での土地と建物の按分は有効ですが、結局のところ、不動産価格については勝手にコントロールすると税務上否認リスクがあります。価格の根拠(つまり不動産鑑定士の鑑定書)が無ければ、税務署は、どんな数字にでも一刀両断できますが、鑑定評価書も万能ではなく、鑑定評価書が否認されるケースもあります。鑑定士の説明力の差異も大きいですから、活用される際は業者選定に注意が必要です。適正な時価を敵かに表現するのは難しいですが、相場価格であれば、税務署も否認できないでしょう。

 

cf.個人から法人への建物のみの譲渡であれば、借地権付建物の経済価値を把握するのは難しいですから鑑定評価書を取るメリットは大きいと思います。ちなみに使用貸借通達は法人がある場合は使えないので、相当地代か無償返還届出が一般的です。実務上は譲渡時には物件の鑑定評価をとって、無償返還届出で対応しています。

 

減価償却目的」での法人への建物譲渡はいただけないですね。そもそも個人が譲渡する際に、一月一日を6回迎えていても、分離課税約20%が含み益の実現分にかかるわけですから。個人的には減価償却は課税の繰延(法人と個人の税制の違いによる税率差メリット等はあり)で結局売却時に含みが実現するので、自己金融や内部留保のための税務コントロール手段という認識でのお付き合いがよろしいかと。

 

 両親のいずれかの将来的な相続を見据えた適正な賃貸借条件といえば、使用貸借ではなく、相場程度の家賃設定にするようにしてください。低廉家賃で賃貸だと、損益通算極大化を図れるいう意図もあるかもしれませんが、所得税においては、説明責任を果たせないでしょう、また、この場合相続時の貸家建付地がなく相続税に係るデメリットのほうが大きいと思います。

 もし、購入時にご自身の物件を担保にお金を借りる場合、万が一競売にかかった場合のリスクも上がりますので借地借家法の保護を受けられる適正家賃による賃貸条件にしてあげてください。

 

→税務リスクは他にもたくさんありますが、「適正な売買価格及び家賃設定」をすれば、基本問題ありません。マンションの時価が数千万円以上なら鑑定評価書を取るメリットはあると個人的には思います。家賃は賃貸募集サイトの同等の競争力の物件に係る成約事例等を参考にすれば大丈夫です。各種契約書、エビデンスは残しておいてください。